整形外科は運動器官を構成するすべての組織である骨軟骨・筋・靱帯・神経などの疾病・外傷を扱い、運動器の機能改善を目的とした診療科です。腰痛・膝痛などの慢性疾患や、骨折、臼・靱帯損傷、神経損傷、筋・腱損傷、スポーツ外傷など保存的治療を中心にしながら、必要があれば患者様と相談し手術治療も行っております。レントゲン、CT・MRIなどを完備し、適切な処置・治療・指導を行っております。変形性関節症、関節リウマチ、小児疾患など、小児から高齢者まで幅広く対応させていただいております。
肩関節に炎症が起こり、肩関節の痛みと運動障害が現れる状態の総称です。40~60歳の患者さんが80%を占めています。また、糖尿病の患者さんや、肩関節の手術を行った方などにも同様の症状が現れやすいとされています。症状が軽く、自然に治癒する場合もありますが、一部では症状が重く、運動障害が長く続く場合もあります。
アキレス腱断裂は、踏み込み・ダッシュ・ジャンプなどの動作でふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)が急激に収縮した時や、着地動作などで急に筋肉が伸ばされたりした時に発生します。受傷時には、『ふくらはぎを棒でたたかれた』とか、『後ろからボールが当たった』、などと感じることが多く、腱が断裂した時の音、「バチッ」や「パン」を自覚していることもあります。受傷直後は踏ん張ることができずに転倒したり、しゃがみこんだりしますが、比較的痛みは軽く、しばらくすると歩行可能となることも少なくありません。しかし、歩行が可能な場合でもつま先立ちはできなくなります。治療は、断裂したアキレス腱を直接縫合する手術治療と、手術を行わすにギプスや装具を用いて腱の修復をめざす保存治療があります。治療開始後4ヶ月程で軽い運動は可能となりますが、全力でのスポ一ツ活動ができるには短くても6ヶ月はかかります。
スポーツ外傷とは、骨折・捻挫・脱・肉離れなどスポーツ活動中、身体に一回の大きな力が加わることによっておこる「ケガ」です。スポーツ現場で「ケガ」がおこったときに、病院や診療所にかかるまでの間、損傷部位の障害を最小限にとどめるために応急処置を適切におこなえば、早期にスポーツ復帰を果たすことができます。しかし応急処置をしなかったり、不適切な処置をおこなうと復帰までに時間がかかります。しかし、頭部・頸部・背部の損傷や大量出血などの意識消失、足・膝・肘関節の脱臼、骨折を疑う著名な変形、けいれん発作などのショックを伴う「ケガ」では、すぐに救急車やドクターを呼び、むやみに動かさないようにしましょう。
椎体の間のクッションの役目をしている椎間板組織が単独で神経圧迫の原因となっている場合を、椎間板ヘルニアと呼びます。椎間板が後方に出っ張って脊柱管の中に入り込み、脊髄や神経根を圧迫する病気です。ヘルニアの原因としては髄核(椎間板の中にある柔らかい軟骨成分)の変性のしやすさや、線維輪(髄核の周囲の線維組織)の力学的強度などの遺伝的要因と、荷重や姿勢、労働などの環境要因が組み合わさって生じると考えられています。歩行障害や膀胱直腸障害がある場合には手術を行います。前方から椎体を削ってヘルニアを取り出す手術(前方除圧固定術)を行うことが多いですが、首の後ろ側から神経の通り道をひろげる手術(脊柱管拡大術)を行うこともあります。
腰部脊柱管狭窄症とは、脊椎にある「脊柱管」と呼ばれる脊髄・馬尾神経の通り道が何らかの原因で狭くなり神経症状を呈する疾患群です。腰部脊柱管狭窄症では様々な症状が出現しますが、典型的な症状として、間欠跛行があります。間欠跛行とは歩き初めてしばらくすると足が痛くなったりしびれや脱力のため歩けなくなり、しゃがんだり座ったりして休むとまた歩けるようになるという症状です。また、自転車には乗れるというのが特徴的です(前屈姿勢だから)。歩ける時間や距離は患者様により異なり、数十分連続で歩ける人もいれば1~2分歩くのがやっとという人もいます。
▼脊髄刺激療法
脊髄刺激療法(SCS)とは、脊髄に微弱な電流を流して、痛みを和らげる外科的治療です。この治療では体内に刺激装置を植込む前に、試験的に電極リードを留置して効果を確かめることができます。効果がある場合に刺激装置などの機器を植込みます。海外では40年前から実施され、国内でも健康保険の適用となっている治療です。これまでに世界で35万人以上、国内でも6000人以上がSCSの治療を受けています。SCSは電極リードを脊髄の外側の脊髄硬膜外腔に“置いて”脊髄を電気で刺激するので、神経(脊髄)を傷つけることのない治療です。痛みを和らげることが期待できます。痛みの原因を取り除く治療ではありません。SCSを受けた患者さんの半数以上の方で、痛みが5割以上改善しています。患者さんによって効果が異なるので、試験刺激(トライアル)によってどの程度痛みが和らぐのか、試す必要があります。痛みがやわらぐことで、運動がしやすくなる、眠れるようになる、余暇が楽しめるようになるなど日常生活の活動の幅が広がります。
腰椎すべり症とは、腰の骨がずれて、神経が圧迫されるため坐骨神経痛やしびれが出現する疾患です。軽度の場合には無症状ですが、進行すると腰痛、神経痛、筋 力低下などが出現し、歩行困難になります。治療方法は症状の程度によりますが、10分以上歩行可能である軽度の場合には消炎鎮痛剤の内服、ダーメンコル セットの装着、神経ブロックなどの保存的治療を行います。歩行が5分以内、起立困難な場合には手術治療が必要です。
▼側弯症
背骨が側方向に曲がっている病気です。先天性・後天性を合わせて、数十種類に分けられていますが、8割は特発性側弯症(原因となる基礎疾患がない)といわれています。ほとんどの症例は外見上の心理的ストレス以外に問題はありませんが、重症例では呼吸機能障害、腰背部痛などを引き起こすことがあり、特に胸椎カーブが100°以上になると肺活量が50%に低下すると言われています。
骨粗しょう症とは、全身の骨の量が減少して骨折を起こしやすくなった病気をいいます。ご高齢の方が転倒すると、若い人に比べて背骨がつぶれる、いわゆる圧迫骨折を起こす頻度が高いです。これは、骨が脆くなって折れやすい状態(骨粗鬆症)になっていることが多いためで、下位胸椎や上位腰椎に多く起こります。主な症状は折れた骨の不安定性による腰痛で、安静にして骨折が癒合すれば症状は取れます。したがって安静加療に加えて、コルセットを装着して骨を安定化させたり、最近ではテリパラチドという骨形成を促進する薬を注射することによって骨癒合を促進する治療を行います。
田中脳神経外科病院 整形外科では脊椎脊髄外科部長として嶋村佳雄医師を迎え、新たに脊椎脊髄領域の外科的治療が可能となりました。それらの一つに、骨粗しょう症による脊椎圧迫骨折に対する「バルーン椎体形成術(BKP)」という低侵襲手術を行うことができます。この手術は1990年代にアメリカで開発され、日本では2011年1月に保険適用になった新しい治療法で、実施できるのは研修を受けた医師のいる施設のみに限られます。
嶋村医師は日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医として「バルーン椎体形成術(BKP)」を300例以上行ってきました。「多くの患者さんは『ぎっくり腰が治らない』と言って受診してきます。しかし、ぎっくり腰なら時間の経過とともに痛みが軽減していきます。
高齢女性で日ごとに腰痛が強くなったり、「背中や腰が痛い」「4センチ以上背が縮む」「背中が丸くなる」などの症状があれば、脊椎(背骨)が潰れる圧迫骨折の可能性があります。
主な原因は「骨粗しょう症」です。『ぎっくり腰がなかなか治らない』など、圧迫骨折に気付いていない人が多く、特に女性は閉経後に骨粗しょう症が急速に進むので、高齢者の『いつの間にか骨折』を見逃さないことが重要になります」骨の内部はスポンジのような網目状の構造をしていて、周りは硬い骨が覆っています。それが加齢とともに骨量が減り、網目状の構造がスカスカになっていくのが骨粗しょう症です。そうなると尻もちをついたり、少し重い荷物を持っただけでも骨がつぶれてしまう。気がつかないうちに圧迫骨折を起こしている人が多く、いわゆる「いつのまにか骨折」と呼ばれています。
「骨は、古い骨を壊す骨吸収と、新しい骨を作る骨形成を繰り返しています。
女性の骨折リスクが高いのは、閉経(50歳前後)を迎えると骨を壊す働きを抑えている女性ホルモンの分泌が減り、急速に骨量が減るからなのです」さらに、脊椎が1個でも骨折すると、2個、3個と骨折連鎖が起こる。すると背中が丸くなり、胸が圧迫されて肺活量や食欲が低下する。加えて、腰などの慢性的な痛みがあると抑うつや睡眠障害も起こる。結果、日常の活動量が減るので、さらに骨が弱くなり、最終的には「寝たきり」になる危険性が高まります。
「レントゲンで圧迫骨折が見つかったら、治療の基本は保存的療法です。コルセットを着けて、3週間以上ベッドの上で安静にして潰れた骨が癒合(固まる)するのを待つのです。その間、痛み止めや骨粗しょう症の薬も使います」この保存的療法で8割以上の方は癒合しますが、骨粗しょう症が進行していて癒合しないケースもあります、その場合、従来であれば金属のネジや棒で骨を固定する大がかりな手術(固定術)が必要になりますが、一方の選択肢として、小さな傷で早い回復が期待できる負担の少ない最小侵襲脊椎外科治療「バルーン椎体形成術(BKP)」の適応が可能になります。「BKPは全身麻酔でうつぶせに寝た状態で行います。背中に針を刺し、骨折した椎体へ細い経路を作り、そこへ小さなバルーン(風船)の付いた器具を入れます。
そして、バルーンを造影剤で徐々に膨らませ、潰れた骨を持ち上げて、できるだけ元の状態に戻します。その空間に骨セメント(樹脂)を加圧せずに充填して埋めるだけです」 手術時間は1時間程度、骨セメントは20分ほどで固まります。手術の傷は、背中に刺し傷が2カ所だけ。入院は平均1週間、早い人では3日で退院できる場合もあります。ただし、骨粗しょう症が治るわけではないので、術後は骨粗しょう症の薬の使用は続けます。薬が効いてくるまでの3カ月~半年はコルセットの着用が必要になります。 「脊椎の後側が潰れて、脊髄方向に骨が突出している症例は、BKPの適応にはなりません。
65歳以上で”長引く腰痛”は、圧迫骨折を疑うキーワードです。」
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